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有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止 ~ 親事業者の禁止事項【遵守事項】 その8 ~

12回前から、第4条に規定されています、「親事業者の遵守事項」についてお話をしています。
13回目の今回は、第2項第1号で規定されている「有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止」のお話です。

親事業者の禁止事項【遵守事項】

下請法が規定する「親事業者の禁止事項」は、第4条に規定されています。
第4条は下記のとおり、第1項と第2項があります。

第4条

第1項

第1項では、下記の7種類です。
  1. 受領拒否の禁止
  2. 下請代金の支払遅延の禁止
  3. 下請代金の減額の禁止
  4. 返品の禁止
  5. 買いたたきの禁止
  6. 購入・利用強制の禁止
  7. 報復措置の禁止

第2項

第2項は下記の4種類です。
  1. 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
  2. 割引困難な手形の交付の禁止
  3. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
  4. 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止

有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

有償で支給した原材料等の対価を、下請代金の支払期日より早い時期に控除・相殺したり、支払わせたりすることを禁止している規定です。

代金を控除したり、相殺したりする取引なので、第1項第6号「購入・利用強制の禁止」と異なり、有償で購入する相手は親事業者となります。

支払遅延の場合と同じく、支払いを早くしたり、下請代金から控除・相殺したりして減額されると、資金繰りが苦しくなることがあります。
このため、禁止しました。

しかし、下請事業者側にも考慮すべき内容がある場合、問題のない親事業者からしてみれば、困ります。
このため、控除・相殺してもよい場合があります。

下請事業者側にも考慮すべき内容がある場合

考え方としては、「受領拒否の禁止の例外」と同じです。
親事業者からしてみれば、早期の控除・相殺や支払を禁止しているからと言って、すべてを禁止すると、次のような場合、困った事が起こります。
それに、保護対象だからと言っても、法律で規制するのはやりすぎと言えそうな、次のような場合は、早期に控除・相殺したり、支払いをさせることができます
具体的には、次のような場合です。

  1. 下請事業者が原材料等を毀損や損失したため、納入する物品の製造が不可能となった場合
  2. 下請事業者が原材料等から不良品を製造した場合
  3. 下請事業者が原材料等から注文外の物品を製造した場合
  4. 下請事業者が原材料等を他に転売した場合

下請事業者が原材料等を毀損や損失したため、納入する物品の製造が不可能となった場合

有償支給とはいえ、納入するものを作るための原材料等です。
毀損や損失など、下請事業者の責めに帰すべき理由で、製造が不可能となった場合まで、下請事業者を保護するのはやりすぎでしょう。
この場合は、早期に控除・相殺したり、支払いをさせることができます

下請事業者が原材料等から不良品を製造した場合

製造が不可能となった場合と同じ考え方です。
製造しても不良品ですから、「受領拒否の禁止の例外」でお話した事項に該当し、受領を拒否できますので、結果的に納品できなくなります。
納品できない以上、製造できていないことと同じですから、早期に控除・相殺したり、支払いをさせることができます

下請事業者が原材料等から注文外の物品を製造した場合

この場合、不良品ではなく、注文品以外を製造しています。
注文品以外の製造の場合も、「受領拒否の禁止の例外」でお話した事項に該当しますので、受領を拒否できますから、不良品と同じで、早期に控除・相殺したり、支払いをさせることができます

下請事業者が原材料等を他に転売した場合

原材料等を転売した場合、代金を得ています。
目的外での利用と下請事業者側に問題があるため、実際には困ることがあるかもしれませんが、資金繰りの問題を考える必要はないでしょう。

次回は、第2項第2号の「割引困難な手形の交付の禁止」です。

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