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利益相反 ~ 取締役の忠実義務の規則 ~

前回、取締役の義務として、「忠実義務」のお話をしました。
その中で、「会社の利益を犠牲にしていない」ことを実現する規則あるとお話をしました。
それが、今回お話をする「利益相反取引の制限」と次回の「競業避止義務」です。

利益相反取引の制限

「利益相反取引」は、(りえきそうはんとりひき)と読みます。
最初にその意味についてお話をします。

意味

利益相反取引」とは、取引の一方の利益もう一方の不利益になる取引です。
こういうと難しいですが、身近な取引です。
わかりやすいところは、売り買い(=売買取引)です。

代表例

売り手がある物を市場価格より高く売ると、その差額が利益になります。
その一方、買い手高く買うことになるので、差額が不利益になります。

逆の場合も、同じです。
買い手がある物を市場価格より安く買うと、その差額が利益になります。
その一方、売り手安く売ることになるので、差額が不利益になります。

このように、利益相反(あいはん)する取引を短くして、「利益相反取引」と言われます。

売買だけではない

「利益相反取引」は「売買」だけではありません。
「贈与」のように「一方が利益与える取引」も含まれます。

利益以外でも

また、「保証人」になるような、「一方が損害受ける取引」も含まれます。
売買の例でお話をしたように、一方が「損害を受ける」ということは、もう一方が「利益を得る」ことになります。
「損害」は「不利益」と言い換えることもできますから、意味のところでお話した内容に置き換えることもできます。

制限とは?

それでは、どのような「制限」があるのでしょうか?

制限の内容

制限の内容は、「取締役会(無い場合は株主総会)」で、事前に、承認決議を得る必要があります。
「事前」に必要な理由は、取引をした後では、損害を取り戻せない場合もあるためです。

売買を例にします。
取締役が、会社の物を安く買ったとしましょう。
承認する前に、取締役が第三者にその買った物を多少上乗せして市場価格より安く売ったとします。
承認されないかった場合、第三者に売ったものを返せと言えるでしょうか?
また、言えたとして、返してくれるでしょうか?
結果として、返ってこなかった場合、取締役に損害を請求しますが、取締役が払えなければどうなるでしょうか?

このように、いろいろな事情で、損害を取り戻せない場合もあります。
これに対処するには、事前に承認決議が必要とすることが有効だからです。

取締役会の決議で大丈夫?

仲の良い会社の場合、取締役どうしであれば、同僚として、多少甘い判断をされる可能性が無いとは言い切れません。
このため、会社法では、対策のため次のような規定があります。

規定

承認を与えた取締役会の決議に賛成した取締役は、会社に損害が発生した場合、状況によって、その損害を賠償しなければならないのです。

状況?

状況とは、賛成の判断をするときに、発生するであろう損害に対して、十分な注意をしていたかどうかです。
この注意は、取締役ですから、「善管注意義務」です。

今の世の中、どれほど厳しく注意して判断をしても、損害を出すことはあります。
全ての損害を賠償させるのは不合理であるため、「善管注意義務」をはたしていたと認められなければ、賠償をさせるという厳しい規定です。
次回は、もう一つの義務である「競業避止義務」についてお話をします。

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