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以前に書いた自筆証書遺言の全てを撤回する場合

今回は、以前に書いた自筆証書遺言の全てを撤回する場合の条文例と注意事項をご紹介します。
特定の財産を指定する相続財産の条文例は、遺言書の条文についてをご参照ください。

以前に書いた自筆証書遺言の全てを撤回する場合の条文例

文例


第○条 遺言者は、平成○○年○○月○○日付で作成した自筆証書遺言の全部を撤回する。



注意事項

以前に書いた自筆証書遺言の全てを撤回する場合に使う条文です。

現実的な話として、自筆証書遺言の遺言書を破り捨てたり、読めないように塗りつぶすなどして、破棄してしまえば、「遺言したことが分からなくなる」ため、「遺言しなかった」ことになり、撤回と同じ意味にはなります。

良いか悪いかの判断は別として、自筆証書遺言をなかったことにするには遺言書ソノモノを破棄する方が簡単です。

わざわざ条文を設ける使い方としては、遺言書を新しく全て書き直す時です。
新しくするには、以前、書いた遺言書の全てを撤回した方が書きやすいからです。

何故かと言うと、新しく書いた遺言書の内容と抵触しない部分は、有効に残るためです。
この部分に有効になることについては、遺言書は一度作ると変更できないの? ~遺言書の変更や撤回について~生前、遺言後にした相続財産の処分(売買・贈与)の扱いについて ~もう一つの遺言書の変更や撤回について~でお話しています。

気を付けなければならないのは、何回も書き直しているときです。

毎年同じ日(1月1日)に書き換えとする場合、以下のような書き方になります。

  1. 平成21年1月1日に作成分
    第1条 遺言者は、平成20年1月1日付で作成した自筆証書遺言の全部を撤回する。
  2. 平成22年1月1日に作成分
    第1条 遺言者は、平成21年1月1日付で作成した自筆証書遺言の全部を撤回する。
  3. 平成23年1月1日に作成分
    第1条 遺言者は、平成22年1月1日付で作成した自筆証書遺言の全部を撤回する。







  4. 平成27年1月1日に作成分
    第1条 遺言者は、平成26年1月1日付で作成した自筆証書遺言の全部を撤回する。

よさそうに見えます。

実は問題になることがあります。

ここからは、頭の体操です。
平成23年1月1日作成分で平成22年1月1日作成分を撤回すると、平成22年1月1日作成分で撤回した平成21年1月1日作成分はどうなるのでしょうか?

一度撤回したのだからなかったことになっているはず・・・

かというと、撤回することを撤回したので、撤回しなかった・・・となり有効とも考えることができます。

逆に、平成21年1月1日作成分で撤回した平成20年1月1日作成分は撤回されたままです。

そうすると、平成20年1月1日作成分で撤回した平成19年1月1日作成分は有効になるのでは・・・。

となかなかややこしいことになります。
民法では、「一度撤回されると、その効力は回復しない」という趣旨の条文があります。

ただし、撤回されていない遺言書の内容で、変更されずに残っている部分は・・・と探すことになり、整合性を取るのが非常に難しくなります。

以前に作成した自筆証書遺言の遺言書が残ったままだと、このような問題が発生することもあるので、全てを新しく書き換えしたら、以前の遺言書は確実に破棄した方がよさそうです。

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