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本店の所在地とは? ~ 定款の最低限の記載事項について ~ 

会社法で決まっている定款で定めなければならない事項は、5項目とお話しました。
今回は、この5項目の内の1つ、本店の所在地についてお話します。
本店の所在地(本店所在地)がわからないということは少ないかもしれません。
でも、本店所在地を定款に書くのにルールがあることはご存知でしょか?
ここからは本店の所在地を書くルールを中心にお話します。

必須の定款事項

何度かお話していますので、おさらいです。
会社法で定款決めなければならないとなっている事項は次の5項目です。
  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

ここからは、本店の所在地についてお話します。

本店の所在地

意味は?

これは、文字の意味のとおりです。
そう、会社の本店のある地名です。
地名としたのは、この後お話しするとおり住所とは限らないからです。

どうして決めるの?

会社の関係者は分かるかもしれませんが、決めないとどこに会社があるか取引の相手方などがわからないためです。

注意点は?

本店所在地については、大きく分けると2つのルールがあります。
このルールについてお話しましょう。

このルールは、大別すると以下の2つです。

  1. 番地や部屋番号まで決める
    例えば、以下のような書き方です。
    東京都○○区○○ ○丁目○番○号 ○○マンション○号室
    神奈川県横浜市○○区○○ ○丁目○番○号 ○○ビル
    千葉県○○市○○ ○丁目○番○号
  2. 最小行政区画まで決める
    例えば、以下のような書き方です。
    東京都○○区
    神奈川県横浜市
    千葉県○○市

定款ではこのどちらかを決めて、書きます。

最小行政区画とは?

最小行政区画というのは、東京23区であれば区、それ以外は市町村です。
横浜市や大阪市など、政令指定都市にある区は含まれません。
このため、横浜市中区であっても、横浜市までです。

この他にいくつかの町村が集まった郡もありますが、これも最小行政区画に含まれないです。
詳細は最小行政区画とは?でお話していますので、ご覧ください。

なぜこのような書き方なの?

なぜ、2つの書き方があるかというと、会社の運営上、住所まで記載するよりも、最小行政区画までの記載の方が、変更(=引っ越し)が簡単にできる場合があるためです。

定款変更についてでお話しているように、定款の記載を変更しようとする場合、別途お話する株主全員を招集して行う株主総会で可決される必要があります。
株主の人数が多い場合、全員を招集するための手間がかかりますし、時間調整も大変です。

例えば、会社の入っているビルが改修工事をするために、一時的に、近所に引っ越すことになったとしましょう。
このような事情ですと、株主さんが反対されることは余りないと考えてもよさそうです。
改修工事ですので、使えないのですから、仕方がありません。

このような場合に、定款に部屋番号やビル名の記載があれば、定款を変更する必要があります。
定款を変更するためには、株主総会を開催しなければなりません。
会社の重要な方向性などを決める事項でしたら、手間や時間をかけても良いかもしれません。
ただ、このような「一時的な近所への引っ越し」のために手間と時間をかけるのは効率的では無いと考える方が多いのではないでしょうか。

また、改修工事ではなくても、従業員を増員するために、近所の広い事務所に引っ越す・・・などということもあるでしょう。
現在のようにビジネス環境の変化が激しいと急いで従業員を増員しないとチャンスを逃すかもしれません。
株主総会の開催まで待てない・・・という状況も考えられます。

このようなときにも、最小行政区画までの記載であれば、定款を変更することなく、本店を移動することができます。

このように会社の運営をしやすくするという意味で最小行政区画までの記載をしているところがあります。

そうしない会社もある・・・

運営しやすいのであれば、全ての会社が最小行政区画にすればよいのではないでしょうか。

ところが、全ての会社が最小行政区画までの記載かというとそうでもありません。
そこまでする必要が無い会社もあるのです。
例えば、本店を移転することを想定していないような会社や株主総会の開催がそれほど手間ではないような会社です。

前者は、例えば、小売店の場合で店舗兼自宅のような場合、本店を移転するようなことは想定していないこともあります。
変える必要が無ければ、問題になりません。

後者は、株主の人数が少なかったり、家族経営などで連絡や集合に不都合が生じる株主が居ないような場合です。
株主総会の手間や時間が問題なので、その問題が無ければ、どちらで記載しても良いということになります。

また、最小行政区画内であれば、定款変更がいらないですが、別の市(区)町村(最小行政区画)に移動する場合は、定款変更が必要になります。
定款変更しないようにすると、移転する先に条件ができてしまいます。
移転のタイミングで条件に合う物件があるとは限りません。
条件に合う物件が無ければ、移動をあきらめるか、結局、定款を変更することになるでしょう。
移転のタイミングで定款変更することになるのであれば、どちらで記載しても同じと割り切った考え方もできます。

このように、会社の状況なども考え、使い勝手が良い方の記載方法を選びます。

次回は、次の「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」についてお話します。

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